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アルコール性肝炎・非アルコール性脂肪性肝炎

アルコール性肝炎・
非アルコール性脂肪性肝炎
とは

アルコール性肝炎と非アルコール性肝炎という2つの肝炎は、組織学的特徴が似ており、どちらも肝硬変や肝がんに進行する可能性がある疾患です。
また、肝臓における酸化ストレスなど、発症メカニズムが共通していることもわかっています。
アルコール性肝炎は常習的な飲酒者の大量飲酒後に発症します。中には救命率の低い重症型もあります。アルコール依存症が要因の場合は、専門的な治療が必要です。非アルコール性脂肪性肝炎は、過食、運動不足、肥満、糖尿病、脂質異常症などに伴う脂肪肝により発症します。

アルコール性肝炎

アルコール性肝障害常習的な飲酒者が大量飲酒後に発症する疾患です。痛みを通常は出さない肝臓ですが、アルコール性肝炎を発症するとおなかの右上部が痛みます。血液検査では、飲酒以外の原因によって引き起こされる急性肝炎と類似の結果が出ますが、大量飲酒歴があれば診断は簡単です。
必ずしも大量飲酒者が発症するわけではなく、女性は少ない飲酒量でも男性よりも発症の可能性が高いです。一度アルコール性肝炎を発症すると繰り返しやすく、肝硬変へと進行する場合があります。アルコール依存症による人も多く、その場合は専門的な治療が必要です。

アルコール性肝炎の
原因

アルコール性肝炎(別称:アルコール性脂肪性肝炎)は、非アルコール性脂肪性肝炎と対比されることがあります。これは、肝臓の組織学的検査によって、両者の組織学的特徴が類似していることがわかったためです。肝臓の組織像では、多数の脂肪滴による肝細胞の腫れ、主に好中球からなる浸潤が見られ、まれに肝細胞内にマロリー小体と呼ばれる変性物質が現れます。どちらも肝硬変や肝臓がんに進行する可能性があります。
日本のアルコール医学生物学研究会や日本消化器病学会の基準によれば、アルコール性肝炎とは純アルコールを1日あたり60gの定期的飲酒(主に5年以上)と定義されており、女性やアルデヒド脱水素酵素の機能が弱い人は1日あたり純アルコール40gでも、アルコール性肝炎の症状が出る場合があるとされています。
一方、非アルコール性肝炎は男性で週210g未満(1日30g未満)、女性で週140g未満(1日20g未満)と定義されています。この定義は国や学会によって異なり、1日あたり30gから60gの間で両者の病態が重複します。

アルコール性肝炎の
進行

  • 初期段階では、アルコール性脂肪肝であることが一般的です。肝臓に脂肪分が多い状態であり、特別な症状はありません。飲酒を減らして体重を減らすことで、正常な状態に戻ることが期待できます。しかし、脂肪肝が重症化したり、長期間放置したりすると、次の段階である肝炎、肝硬変に進行します。
  • 次の段階は、アルコール性肝炎です。肝臓の機能がより低下している状態です。発熱、嘔吐、腹痛、下痢などの全身症状がみられます。意識障害や多臓器不全を伴う最重症型は劇症肝炎と呼ばれ、緊急入院の必要があります。集中治療室で治療しても救命率の低い状態です。
  • 最終段階は、アルコール性肝硬変と呼ばれる状態です。 肝細胞は著しく変形して縮み、正常な機能の多くが失われます。栄養不足により体重が減少し、腹水が溜まり、おなかが大きくなって痛みを感じます。吐血や昏睡の危険性も高まります。

アルコール性肝炎の
治療

薬で肝臓の機能を改善することはできません。薬であっても人体にとっては「異物」であり、肝臓の負担を増やすことになるからです。痛み止めや吐き気止めなども同様です。そのためアルコール性肝疾患の治療は断酒が重要になります。しかし、肝疾患になるほど過剰な飲酒の習慣がある方にとって、断酒は困難です。心理的、身体的、社会的な問題などで断酒が難しい場合は、飲酒欲求に繋がる根本原因を解決する必要があります。場合によっては精神科医との連携も検討します。

非アルコール性脂肪性肝炎

非アルコール性脂肪性肝炎非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)は、過食、運動不足、肥満(特に内臓脂肪型)、糖尿病、脂質異常症などに伴う脂肪肝により発症する肝炎です。
飲酒しない人を除き、多くの脂肪肝は飲酒・非飲酒と2つ要因が関係しているため、アルコール性と非アルコール性脂肪肝炎には重なる部分があります。
従来、脂肪肝の治療は動脈硬化による生活習慣病予防の観点から、肥満、糖尿病、脂質異常症などの治療や生活指導が主でした。しかし、NASHは単なる脂肪肝ではなく、肝硬変や肝がんに進展する可能性もあります。そのため肝疾患そのものを予防する治療が重要視されてきています。
日本ではまだ、NASHの発症頻度や肝硬変、肝がんに進行する人の数が明らかになっておらず、今後さらなる研究が必要になりますが、肥満人口の増加に伴い、NASHは増加していくと考えられています。

非アルコール性脂肪性肝炎の症状

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/NASHは、一般的には無症状のことが多いです(48~100%)。症状がある場合、体のだるさが最も多い症状であり、体のだるさは活動力の低下とも関連しています。
NAFLDでは自律神経失調症が多いです。自律神経失調症によるだるさは、起立性低血圧や夜間低血圧などと関連していると言われています。
NASHには、うつや不安などの精神症状が多いという報告もあります。
肝硬変まで進行すると、クモ状血管腫、手掌紅斑、腹水、黄疸を伴うこともあります。

非アルコール性脂肪性肝炎の治療

NAFLDの治療の主な焦点は、メタボリックシンドロームの抑制と肝障害の進行予防です。特に、NASHは肝硬変や肝発がんに進行する危険性があるため、積極的な治療介入を行う必要があります。
NAFLDの治療の原則は、食事療法や運動療法を含む生活習慣の改善です。それにより、疾患の基礎にある肥満、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧の是正を目指します。
NAFLD/NASHでは減量が肝機能や肝組織の改善に有効であることがわかっていますが、減量以外の治療(生活習慣への介入や薬物療法など)に関しては、まだ効果が証明されているものはありません。

 食事療法

食事の摂取量に関し、標準体重あたりの総カロリーを25~35kcal/kg/日、タンパク質を1.0~1.5g/kg/日に制限します。脂肪は飽和脂肪酸を避け、総カロリーの20%以下に抑えます。

 運動療法

有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水中運動など)が有効です。毎日20分程度の有酸素運動が最も推奨されています。

薬物療法

ビタミンE

非糖尿病性NASHでは、現在のところビタミンEが第一選択になっています。一方、肝生検が行われていない症例や、肝硬変の症例ではビタミンEの投与は推奨されていません。

オベチコール酸 (Obeticholic acid: OCA)

米国において、オペチコール酸はプラセボと比較して肝線維化および疾患の重症度を改善することが示されており、日本でも第III相の臨床試験が計画されています。

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